えとぶんでえすいーのブログ

したっぱシステムエンジニアが日々気づいたことを絵と文で書く(SE色薄め)

【唐突に最終回】会社を辞めるのは臨死体験に似ている

会社辞めました。

なんだかんだ7年くらいシステムエンジニアしていたのですが、この度転職が決まったので辞めることになったのです。

転職先の話はさておき、辞めると決めてから職場に行く最後の日までを過ごしてみて「会社辞めるのって臨死体験みたいだな」と思ったのでそのことを書きます。

辞めると伝えたときの上司の一言にグッときた

内定が出てすぐ上司に「辞めます」と伝えました。ちょうどその年の評定を決める頃でしたので、その面談の時に「ちょっとお話が…」と切り出しました。

転職するって話は職場では誰にも言ってなかったので、上司は驚いていましたね。いやだって「辞めたい」って思っている人と一緒に仕事したくないじゃないですか。「職場に嫌な人がいる」とか「残業が多くてツラい」とかの、異動等で改善できうることならまだしも、別の会社じゃなきゃできない仕事をやりたいってことは職場の人に言ってもしょうがなかったので黙っていたのです。実際私は今の部署にずっとい続けたいと公言していたので(これは本意で、会社を変えないなら部署を変えたくないと思うほどには現場を気に入っていました)、上司からしてみたら寝耳に水ですよね。

今の現場に不満があるわけじゃな…いこともないんですけど、それよりは、昔からやりたいことがあって、有難いことに次が決まったんですと話したら

「そっか…期待してたからすごく残念。

でも、私が言うことじゃないかも知れないけど、よかったね。おめでとう!」

と言っていただけました。

…こんなこと、部下に言えますか?「おいおいおい教育もタダじゃないんですけど!!?」ってまず思うのが人間ですよ。何ですかこのベストアンサー、人格者すぎる。今思い出してもぐっとくる一言です。この一言で背中を押され、また同時に「この人の期待を裏切ることになるんだ…」と少し胸が痛みました。

辞めると伝えてから辞めるまでの1ヶ月の心持ち

それから1カ月ほどは「辞めると決めた会社で仕事をする」という状況になりました。幸か不幸か最後の最後までやるべきタスクが終わらなかったので、何もすることがなくてぼんやりとすることもなく、最後の一日まで変わらぬ生活ができたんですよね。それでも一日一日、会社を去る日が近づいているという事実が私をなんとも不思議な気持ちにさせました。

実は私は入社して配属されてからずっと同じ現場に常駐していて、そりゃ7年間続けていたことが終わるとなれば寂しい気持ちにもなります。窓から外の景色をみれば「ここからの眺めもそろそろ見納めか」と思うし、社食に行けば「ここの微妙なパスタもあと数回しか食べれないのか」と思うし、プログラムを見れば「このわけわからんロジックを見るのも…」と、まああらゆるところでしんみりとはしていました。

だから「熱闘甲子園やはじめてのおつかいで号泣する私のことだ、ここを離れるとなれば涙涙で大変なことになるだろう」…と思っていたのです。が、正直、そこまで気持ちが盛り上がらないというか、想定よりずっと平常心でした。むしろ誰か親しい人が辞めてしまうときのほうがもっと哀しくて泣けてきたものです。

結局自分で決めたことだから

これにつきますね。自分で決めたことに感極まるのもおかしかろうという思いが私を冷静にさせていました。私も今まで辞めていく人を見送る時「なんだみんな結構クールだな」と思っていたのですが、こういう心持ちだったんですね。

退職とはその会社において自分が死ぬことだ

私は今まで幸いにも死に瀕したことがないので実際のところはわかりませんが、自分がここからいなくなるんだという確実な未来が存在することが、しかもきちんと明確な月日が決まっていることが、臨死体験を思わせました。学校を卒業するときにもそれに近い気持ちになったわけですが、その時は同級生という同じく死を迎える人間がたくさんいるわけで(語弊がある)、そこまで「ああ、自分はもう…」感がなかったんですよね。当然ですが会社は自分がいなくなっても継続するので、来月、再来月の未来の話も出てくるわけですよ。自分がいなくなった後の世界の話。「ああ、もうそのとき私はいないんだ」と思ったときの空虚感。100年後の話しているときと似た気持ちですね。それがもっと近い未来になった感覚です。

もしかしたら職場の人には「そこそこ長く勤めていた会社を辞めるわりには冷静じゃん。よっぽど次の仕事が楽しみなんだね、フン」みたいに思っている人がいるかも知れませんが、それはちょっと違うと言いたいのです。確かに希望を持って転職するので楽しみな気持ちは否定しませんが、要するに

「だってもう死ぬんだもん」

って思っちゃたらもう何もできませんよ。そりゃ寂しいですよ。「期待してる」って言ってくれて色々任せてくれた上司には感謝しかないです。優しくなんでも教えてくれる先輩がいて、慕ってくれる可愛い後輩がいて、一緒にランチ食べてくだらない話をしてくれる同僚がいて、その人たちが一生懸命取り組んでいることを放り出すように辞めていくことは、申し訳ないとしか言えないですよ。だけど、例えばいま本当に死んでしまうとして親や友人に、どれだけ言葉を尽くしても、どれだけ涙を流しても、どれだけ遺産を残しても、ありがとうやごめんなさいの気持ちなんて伝えきれないじゃないですか。死んでいく人間が残される人間にできることって、生きて一緒にい続ける以上のことなんてないんです。

死にゆく私ができること

最後、お世話になった人に挨拶して回ったのですが、上記の理由でどこかさっぱりとした別れになってしまいました。でも正直、そりゃ涙を流す等の演出やそれっぽい言葉で彩ることはできたかも知れませんが、私にできることはもう何もないんだという無力な気持ちが大きかったのです。それだけが心残りといえばそうですが、死んでいくことに後悔がないことなどあるのでしょうか?その人生が楽しいものであればなおさらです。だからこのモヤモヤは甘んじて受け入れ、これからも背負っていくことに決めました。

…なんかただの転職なのに重い話に…なってしまいました…なぜ…

現世、そして来世

まあ実際には死なずに人生は続くわけで、単に職場が変わるだけですからね。また別のところでも頑張るってだけです。今回の人生は楽しくてよかった、それ以上でも以下でもありません。

来世ではWEBサイトの編集・制作の仕事をします。ずっとやってみたかった仕事なのでとっても楽しみです。あと、前世を過ごした世界が、私が死んだ後どんな風になったのか聞くのも地味に楽しみにしています。

というわけで

私は来年システムエンジニアじゃなくなります。「えとぶんでえすいーのブログ」でもなくなりますからね、このブログもおしまいです。誰も定期購読しちゃいないと思いますが、たまたまちらりとでも読んでいただいた方々、ありがとうございました。またどこかで。

超絶難解映画『メメント』を観てよくわからなかったけどもう一度観る気はしないあなたへ

こんばんはたまリモです。

 

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メメント』という映画を観ました。

メメント』は2000年に公開されたアメリカ映画で、『ダークナイト』や『インセプション』で有名なクリストファー・ノーランの監督作品です(いまWikipediaで見た)。

 

メメント』は超絶難解映画

この『メメント』がですね、とってもおもしろいんですけど、とっっっっっっても難しいんですよ。難しいっていうのは「コンセンサスをとって」「パラダイムシフトにより」「イノベーションオーソライズしてファビュラス(※意味は適当です)」みたいな話ではなく、『涼宮ハルヒの憂鬱』や『それでも町は廻っている』みたいな時系列ぐちゃぐちゃ系なんです(※例に偏りがあってすみません)。

巧妙に伏線が張ってあって、結末に「そうだったのか!」と驚きがあり、いや〜おもしろかった〜と思った、のですが……どうも消化不良な感じが否めませんでした。時系列がぐちゃぐちゃなことはわかったんですけど、それが本当はどういう順番で、どのように伏線があって回収されて、っていうのがよくわからなかったのです。折角よく作り込まれたいい映画のように思うのに、それを十分味わえてない気がして、観てる最中からずっと「あ〜、これ観終わったらネットで解説サイト読も」と考えていました。

それで解説サイトをいくつか回ったのですが、そのサイトの記載が難しいのか私の頭が悪いのか(間違いなく後者)、イマイチ理解しきれなかったので、自分で図解して整理することにしました。同じ思いを抱いてネットサーフィンをしていたあなたにこの記事を読んでほしい。もう一度観直したらわかるのかもしれないけど、そこまでしたくないんですよね?わかります。私があなたの替わりに何度も観直しました。エクセルで時系列と伏線を整理して図にまとめました。もう大丈夫。あなたの頭が悪いのではないのです、この映画が難しいのです。ええ。

 

以下、『メメント』のネタバレしかしていないので、未視聴の方でいずれ観たいと思っている方は読み飛ばすか、酒をしこたま飲んで記憶を飛ばす勢いで読んでください。未視聴でも、そんな難しい難しいってどんな構造の映画だよ、って気になる方は読み進めてください。そして実際に作品を観て混乱を分かち合いましょう。

 

メメントを図解してわかりやすく整理しました

メメントは主人公の男「レナード」の視点で物語が進みます。以下Wikipediaからあらすじ抜粋。

ある日、自宅に押し入った何者かに妻を強姦され殺害された主人公・レナードは現場にいた犯人の1人を射殺するが、犯人の仲間に突き飛ばされ、その外傷で記憶が10分間しか保たない前向性健忘になってしまう。

復讐のために犯人探しを始めたレナードは、覚えておくべきことをメモすることによって自身のハンデを克服し、目的を果たそうとする。出会った人物や訪れた場所はポラロイドカメラで撮影し、写真にはメモを書き添え、重要なことは自身に刺青として彫り込む。しかし、それでもなお目まぐるしく変化する周囲の環境には対応し切れず、困惑して疑心暗鬼にかられていく。

果たして本当に信用できる人物は誰なのか。真実は一体何なのか。

という話です。おもしろそうですか?

この映画をできごとの順番、時系列でまとめるとこんな内容です。

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メメント』はこの一連の出来事を映画にしているのです。これだけ読むとわけがわからない上におもしろくなさそうですね。すみません。内容はともかく、これだけ場面転換があると考えてください。

さて、こっから時系列をぐちゃぐちゃにしてきます。

上図の場面3〜13がありますね。まず、これらの順番を逆にします。

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つまり、時系列としては3→4→5→…というのを13→12→11…と並べ替えているんですね。こんなことしないでよわかりにくい!!と思うかもしれませんが、この並べ替えにより、映画を観ている側も主人公:レナードの「記憶が保てず不安な気持ち」が共感できるようになっています。レナードは10分間しか記憶が保てないため、「今」の情報を未来の自分につなぐことができません。15分後に誰かと待ち合わせ、ということも忘れてしまうのですから、それはもう暮らしにくいわけです。その対策としてレナードは、写真を撮ったりメモに残したり、大事なことは自らの体に刺青を残したりして、未来の自分に「こう動け」という命令を残しています。例えばこの映画は場面13「テディを殺す」ところから始まりますが、これも「テディ」を撮った写真に「こいつが犯人だ。殺せ」とメモがあったゆえの行動です。観ている私としては突然人が良さそう(に見える)おじさんが殺されるわけで「えっなんで!?」と思うわけですよ。それを場面12→11、と過去を遡っていくことで、「ああ、こういうことがあったからかあ」と理解していくのです。

「今」の自分の行動の理由がよくわからないまま「過去」の自分の命令に従って動く、そんなレナードの不安な気持ちを、視聴者側も味わえるわけですね。いや〜わかりにくい!(褒めてます)

 

ぐちゃぐちゃ具合はこれで終わりではありません。次は場面2を観てください。『電話にでる。記憶の保てない男「サミー」の話をする』というシーンですね。この『記憶の保てない男「サミー」の話をする』部分を8つに分割し(2a〜2h)、場面1とあわせて先ほどの場面3〜13の間へ順番に挟み込みます。

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この右側!

これが映画『メメント』なんですよ!!

難しすぎる!!!

しかしそこがいい!!!!!

※ちなみに色を青と黒で分けているのは、黒:モノクロのシーン、青:カラーのシーン、となっているからです。最後の混ざっているところはモノクロだったのが途中でだんだんとカラーに変わっていくようになっています。

 

私は映画に詳しくはない上に、脳に障害を負っていない(ハズ…)にも関わらず、観た映画を片っぱしから忘れてしまう性質ですが、こういう構造はおもしろくっていい映画だなあと思いました。ただ単に「おもしろみ」で時系列をぐちゃぐちゃにしているのではなく、きちんと目的(恐らく主人公への感情移入)を持って「あえて」視聴者を混乱に招いていることが素晴らしい。こんなに何度も巻き戻したり一時停止したりして観た映画は初めてです。そしてやっと『メメント』のおもしろさが9割方わかった気がします。またひとつ賢くなりました。ありがとう『メメント』!

 

ネタバレとは書きましたが、ここに書いた内容を頭に入れて観ても十分に楽しめる映画です(肝となるところは省略しています)。是非観てみてくださいね。そしてまたこの記事を読んで「あ〜こうなってたのか〜」と分かち合えたら嬉しいです。

 

ちなみに▲の話をまとめたのがコレ▼

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う〜ん、ややこしい!

おしまい。

女の言う「かわいい」の信頼を取り戻せ!の話

こんばんはたまリモです。

世間では(私の言う世間とはネットの一部地域のことなのでどこまで実際の世論と異なるのかわかりませんが、という長い言い訳というか保険はさておき)女子の言う「かわいい」は信用がないらしいですね。
よく聞く、というか見かけるのが
「女芸人をかわいいと言うから『お前に似てるよな』」と言ったら怒った」
といった日常に潜むトラップにかかった話、
「合コンで『かわいいコを連れてくる』と言っていたのに明らかに自分より下のレベルを連れてきた」
といった詐欺同然の行為に遭った話、そして
「かわいいって言ってる自分がかわいいと思ってる」
といった精神の在り方を問う話、の3つです。

どこの誰が言ったのかわからないけれど、その「かわいい」にはちゃんと理由があるんですよ、まあまあその刀を納めなさいよってことで、上記3つについてQA形式で弁解したいと思います。なお私の意見であって女子の総意ではないのであしからず(また保険)。

 

Q1女芸人をかわいいと言うから「お前似てるよな」と言ったら怒られたんだけど?

A1)「かわいい」にはイロイロあるんだよ!

これに尽きます。だって「カッコいい」だってそうでしょう。妻夫木くんがカッコいい。赤のポルシェがカッコいい。全裸のお盆一枚で勝負してるのがカッコいい。どれもカッコいい、それと同じです。ガッキーがかわいい。くまモンがかわいい。小さく咲く花がかわいい。イロイロあるんです。「この腕時計カッコいいな!」「お前に似てるな」「……」っていうことですよ。女芸人をかわいいというのも、まあくまモンみたいなものだと思ってると思っていただいてよいです。似ていると言われても嬉しくないのはそのためです。「え、そういうカテゴリーじゃないんだけど、なに的外れなこと言ってんの?」ってことです。同じ人間に対して紛らわしいよ!と思うかもしれませんが、そもそも女のかわいいが幅広くあるから皆さんも母親にかわいいかわいい言われて育てられたと思えば有難い気持ちにもなるかと思います。

 

Q2合コンで「かわいいコを連れてくる」と言っていたのに明らかに自分より下のレベルを連れてきたんだけど?(怒)
A2)しょうがない、人間だもの

これはごめんなさい。私は元々どんなメンツでもモテた試しがないので、たとえ幹事であっても下のレベルを連れて行こうとは思わないのですが(というか下のレベルの人間が稀だよ)、まあ気持ちはわかります。誰だってチヤホヤされたいし、チヤホヤされるのを横目で見るのはおもしろくないものです。合コンもボランティアじゃないですから、利益を得たいと思ったら自分に有利な戦局になるよう画策するのは当然です。対策としては、幹事をかわいい人、もしくは下のレベルがいないほどの顔面の人に頼むしかありません。いやしかし女の子は内面だよ!(何かの保険)

 

Q3かわいいって言ってる自分がかわいいと思ってるんでしょ?
A3)そもそもカワイイカワイイ言ってる女のコってかわいいか?

質問に質問で返すという禁じ手を使って申し訳ないのですが、正直不思議です。別にかわいいって言ってる女のコってかわいいとは思いませんけど…かわいいですか? むしろなんでもかんでもかわいいかわいい言ってるのってアホみたいじゃないですか? これは男性の側の意見を聞きたいところです。あんまり「かわいいと言ってる女のコ萌え」って聞いたことないので、これは誤解というかうまいこと言おうとして事実から離れてしまったイチャモンのような気がするのですが……。そりゃここでは書けないような罵詈雑言を言う女子よりかわいいかわいい言ってる女子の方がいいですけど……どうなんでしょう? 「かわいいと言ってる女のコ萌え」の人がいたら教えてください。

 

最後やや適当ですが、女のコの言う「かわいい」の真意を知ることができたでしょうか。ま、あんまり意味ない言葉だと思ってもらっていいです。掛け声みたいなもんですよ。「ヨイショ!」みたいな。でも言ってあげると気持ち的に勢いがついて嬉しい言葉ではあるので、うまく活用してください。(関係性によってはセクハラになるので注意)
そうそう、合コンで顔面偏差値が高いコを連れてきたければ「美人なコ」と指定した方がいいように思います。かわいいより狭義かと思いますので、少し信頼度は増すのではないでしょうか。あ、でも人間は内面ですけどね(やっぱり保険)。

熟年夫婦の「最後の晩餐何食べる?」で羨ましくもほっこりした話

こんばんは、たまりもです。

表題の話をします。

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※特になくてもよい絵

 

「最後の晩餐なに食べる?」

なんて話、たまにしますよね。

「カレー」←本当に好物なんだなあ

「白飯と味噌汁」←なんかカッコつけてない?

「フグの肝」←最期まで好奇心を忘れないのね

「死んだ母さんのにぎってくれたおにぎり」←……悲しくなるよ…というか聞きたいのはそういうことじゃないよ…

とまあ人によっていろんな答えが返ってきて、そこから人柄が伺えたりして、暇つぶしにはもってこいのテーマなわけです。(ちなみに先日私がこの話をしたときは「最後の晩餐とは自分だけの話(死刑執行等)なのか、それとも世界全部なのか(隕石衝突等)ハッキリしてくれないと決められない」という設定自体に物言いが付けられて結論が出ずに終わりました。そう考えるとあんまもってこいじゃないかも)

先日ひとりで鰻屋に行ったんですが、そのとき隣のテーブルの夫婦がこのテーマについて話していました。どちらも60過ぎくらいで、奥様はショートカットでチャキチャキしたカッコイイ感じ、一方ご主人は大人しめの、どちらかといえば寡黙な雰囲気の方でした。こちらはひとりなもんですから、鰻を食べながら、その話をBGM代わりになんとなく聞いていたのです。どうやらこのお店には定期的に来られているらしく、「今年も来られてよかったわね」「やっぱりここおいしいわね」などと言い合っており、なかなか仲睦まじい感じなんですよ。うらやましい。

すると奥様の方が突然

「あなた、最後の晩餐は鰻とステーキどっちがいい?」

と持ち出してくるではないですか、例のテーマを。私は(最後の晩餐、その2択なの?ご主人の好物なの??)と思いながら耳が離せません。

以下会話形式で。(奥様:奥、ご主人:主、私:私)

主「なんで急にそんなこと」

奥「どっちが好きなのかなと思って」

主「う〜〜〜〜〜ん……高級感で言ったら、鰻かなあ」

私(2択でよかったのかー!っていうかステーキは高級じゃないのー?)

奥「そうなのね」

主「うん……

その前の日はステーキ」

私「!?(え〜〜〜!そんな何日も献立表作るのアリ!?)」

最後の晩餐の前の日を持ち出すのズルいじゃないですか!ご主人の柔軟な発想と突然のワガママっぷりに驚きつつキュンとする私。話はまだ続く。

奥「前の日はステーキなの?

……じゃあその前の日は?」

私(おお、奥様うわてだわ…)

主「う〜ん……」

奥「ちくわの煮たやつ?」

私(!!!!!???????)

そのあと特に「ちくわ!?」ともならずに別の話題を続ける夫婦。しかしちょっと立ち止まってよく考えて欲しい。まさかの3位が「ちくわの煮たやつ」ですよ!なんですかそれおいしいの!?1位鰻、2位ステーキ、からの3位ちくわの煮たやつ!!料理名ですらなし!夫婦にとってはフツウの会話かもしれないですけど、私はこの一部始終を心に刻み付けることに決めましたね。

そしてこうなるとね、もう勝手に心温まるスイッチが入りますよ。炭に一度火が入ったらあとは放っておいても消えることがないように、どんどん私の中で温かさが増していきます。きっとご家庭でも、奥様が夕食にちくわを煮ていると、ご主人が鍋を覗いて「おっ、ちくわの煮たやつか…」なんて言うんだろうな、とか。「それ好物なんだよ、ありがとう!」なんて言われずともわかるんですよ奥様には…とか。(あの人意外とこんな庶民的なもの好きなのよね)なんて思ってたりして…ご主人の誕生日のご馳走(もちろんステーキ)に付け合わせとして静かに横たわってたりして……とか!

私がちくわのくだりから脳内二次創作をこしらえてほっこりしている内に、この夫婦は「今度ロイヤルホスト行きましょう、ご無沙汰だから」「ミックスフライ定食とか食べたいわ」と話しながら鰻屋を去って行きました。

こんな結末の「最後の晩餐」聞いたことないですよ。しかしかなり思うところがありました。別に会話の内容としては爆笑する要素もないし、実際お二人もほとんど笑っちゃいなかったのですが、夫婦や恋人同士の会話の行き着く先ってここでありたいなと思わせるなにかがあるんですよね。

私は趣味で深夜ラジオをよく聞くのですが、そこでの話って「内輪話」になりやすいんですよね。「パーソナリティとリスナーだけがわかる話」ってのがおもしろいんですよ、特に深夜のテンションでは。私が好きだった「くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン」なんてそれの最たるものと思っていて、あの番組のリスナーなら「まいったね」「先行ってっかんな!」「マックミランだからね」なんてワードを交わすだけでニヤニヤと笑いあえるはずです。そもそも笑いって内輪なもんじゃないですか。誰もが聞いて面白いことなんてそうないし、それは友達同士の会話だって同じことでしょう。

話は戻って、夫婦や恋人の会話って、突き詰めると「思い出を起因にした話」が8割なんじゃないの、って思うんですよね。もちろん「今」の話もするんでしょうけど、特に老後お互い家にいるってなったら、何か特別報告することもなさそうじゃないですか。そういうとき「あのときこうだった」「ああだった」っていう二人しかわからない、端から聞いても何が面白いのかわからないことを話す喜びというか、積み重ねてきたからできる会話をするんじゃないでしょうか。ちくわの話も、ご夫婦ふたりのちくわエピソードがあったから生まれたような気がするんですよね。結婚しない人が増えたなんて言われて、まあ結婚しない自由もあるよなとも考えるんですけど、こういうの聞くと「やっぱりいいな〜夫婦」って思います。

 

私もちくわの話を誰かとできるようになりたいものです(かなりざっくりした結論)。

 

おしまい。

【贖罪】兄のエロ本を捨てた話

こんばんはたまリモです。

何の罪にあたるのかわからない上にもう時効(であってほしい)なので白状します。小学校6年生のとき、兄(当時中学二年生)のエッチな本、俗に言うエロ本を勝手に捨ててしまったことがあります。ので、その話をします。もしかしたら男性の方には怒られる内容かもしれません。ごめんなさい。贖罪の話です。

世にいる全ての兄を持つ妹に当てはまる話だと思うんですけど、幼少期の妹って特に自己中心的で「兄のものは私のもの、私のものは私のもの」みたいな身勝手さがあるじゃないですか。とんでもないジャイアニズムなのですが、なぜか妹ってそう育ってしまうんですよね。例に洩れず私もそんな不届きな妹で、兄が私のベッドに寝転がろうものなら激昂して叩き出していたのにもかかわらず、自分は兄の部屋で勝手にゴロゴロするし勝手に私物を漁っていました。やたらウンコやらちんこやらが出てくる漫画が描かれたノートも勝手に読んでは鼻で笑っていましたし、なぜか学校内の恋愛模様を書き留めたメモ(好きな人と好かれている人を図表化して整理)なんかも発見しては兄の趣味の悪さに辟易としていました(お前が言うなと今では思います)。
だいたい皆さん察しがつくとは思いますが、いつも通り兄の部屋で目ぼしいもの(新しい文具や前述のようなノートやメモ)がないかと捜索していると、学習机の引き出しの中に、前に覗いたときにはなかった本があるんですよ。実はそれは引き出しの中でも鍵付きのところに入っていたのですが、私と兄は同じ型の学習机を使っていたので、私の机の鍵で兄の机の鍵も開けられちゃうんですね。いまシステムの仕事をしている身としては、当時のセキュリティ意識の低さに震えます。家具のメーカーさんには、妹のいる兄のプライバシーを保護するためにも、学習机の引き出しに指紋認証等を取り入れることを強く勧めたいですね。

話は戻って、兄の秘蔵(?)のエロ本を見つけてしまった当時11歳の私(兄の名誉のために明記しておきますが、特に将来が心配になるような趣味のものはありませんでした。あしからず)。実のところ大変ショックでした。私はこのように家庭内隠密活動をする等の大人な一面を見せる一方で、兄が「オレは将来サッカー選手になる」という夢を中学生くらいまで絶対叶うと信じ続けるといったピュアなこどもの側面も持ち合わせていたのです(なお、その後いつのまにか「オレは弁護士になる」「ゲームデザイナーになる」「公認会計士になる」等と次々変わっていったため現実に気づいたという思い出があります。ちなみにいま兄はただの会社員です)。だから「あの兄がこんなエッチな本を……」と大ショックを受けたのです。さらに私の家は「学校で好きなコがいる」というレベルですら男女の話が話題に上がることがなかったため、まさかそんな性的な(それもキス以上の過激な)文化がこの家に持ち込まれるなんて!と驚愕し恐れおののいたことをよく覚えています。「もしかしてこれは兄のものではなく、誰か友達から無理やり渡されたのでは……?」という(いま思えば)超解釈も生まれたほどです。

大混乱となった私が行き着いた先は「これ、捨てよう!」でした。なぜそういった極端かつ残酷な行動に出たのかいまとなってはわかりませんが、我が家にそういう文化が入ってくるのをどこか恐ろしく思ったのかもしれません。よく世界史で「宗教による民衆の結束を恐れた王は、その宗教に関連する書物を焼き払い排除しようとした」とか出てくるじゃないですか。「焚書坑儒」みたいなやつ(これが今回一番偏差値高い単語です)。その王様と同じ心理ですよ。危険因子は除こうとしたんでしょうね。

ではどこに捨てるのか。単純にゴミ箱に入れても捨てたことが兄にバレてしまうし、なにより民衆(ここでは両親)に見つかってはまずいと考えました。異文化が入ってきた形跡すら悟らせたくないと思ったんですね、私という王は。あと、なぜだか見つかったら兄が怒られるような気もしていました。不思議な心理状態なのですが。

じゃあどこか外に、ということで、何を思ったのか隣のアパートの入り口のあたりに捨てに行きました。適当な紙袋に入れて。あまりアレを持って遠くに行きたくない、という心理も働いたのでしょう。「一番近い我が家じゃない場所」と考えたのかもしれません。無事誰にも見つからず任務を遂行し、異常に気付いた兄が「オレの本知らない?」とブッコんでくることもなく(そりゃ言えないよ)、我が家と私の心に再び平和が訪れた

……と思いきや!数日後、兄の引き出しを漁っていた私(懲りない)はまたしても例の異文化の本を見つけてしまったのです。それも前回は2、3冊程度だったのが今回はもはや鍵付きの引き出しに収まらず、通常のセキュリティゼロの引き出しにも及ぶほどの量でした。このとき私は「あ、これは友達に渡されたとかじゃねーわ。兄の私物だわ」と自然と悟りました。大人の階段登りました。とはいえこれが危険因子であるという考えは変わらず「さて、これも捨てに行かねば」と思ったのですが、それと同時に頭に浮かんだのは「なんかめんどくせーわ」ということでした。隣とはいえなんで私がアパートまで捨てに行かなきゃいけないんだ、クソ面倒臭い、と謎の怒りすら覚えました。とはいえこのような物が家にあるのは不快だし、と考えた結果、あろうことか私は「隣のアパートの2階に投げ捨てる」という暴挙を思いついたのです。

我が家は2階建ての一軒家で、2階にある兄の部屋からは、同じく2階建ての隣のアパートが見えていました。そこで以下のような犯行に及んだのです。

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いま考えると本当に当時のアパートの住民の方には申し訳ないことをしました。御在宅だったかはわかりませんが、突然天井から何かそれなりに質量のある物がぶつかる音がすれば不安に思うに違いありません。しかもそれがエロ本だったとすれば不安&不快極まりないじゃないですか。本当にすみませんでした。

当時はこのように隣人に思いを馳せることもなく、何度か(少なくとも2度は)このようなアクロバット不法投棄を繰り返しました。次第に私も大人になっていき(供給のスピードが著しく上がったこともあり)めんどくささが上回ってやめたのですが、先日実家に帰った際に例のアパートが取り壊されているのを見て「あ、あのエロ本、どうなったんだろう」と思い出した次第でございます。あのときは各方面にご迷惑をおかけしたと深く反省しております。本当に申し訳ございませんでした。ちなみにいまも兄とはこの話はできずにいます。たぶん一生しないのでしょう。全く情けない話ですが、墓場まで持っていくんだろうなと思っています。

お兄ちゃん、ごめんね。

 

おしまい。

気胸になった日(入院!編)

前回までのあらすじ

「心臓が痛い」と半ば脅して仕事を早退したが医者には「よくわからんけどそういうことある」とざっくりした診断をされ何か病名がないとかっこつかないと焦った著者は2ちゃんねるスレッドから「気胸」という肺の病気にたどり着き確実な診断もとい早退した大義名分をもらうべく病院に行くことにした。

 

前回の記事

tamarimo.hatenadiary.jp

 

2.再診!

正しい診断を受けるべく、あらためて病院に行くことにしました。今度は循環器科狙い撃ちです。会社の上司には「今日は専門の先生がいなかったみたいで、明日また来るように言われました」と実にそれっぽい理由をつけて翌日も休むと連絡。

翌朝。時間通り会社に行かなくていいってなんてすがすがしいんだろう、これだけで病気も治りそう……とつい考えてしまうけれど、今日という日を心置き無く休むために病院へ。待合室はそれなりに混み合っていましたが、待つこと約10分、診察室へ。

ここで肝に命じていたのは、決して自分から「気胸だと思うんですけど」と言わないことです。ネットで仕入れてきたニワカ知識(それも2ちゃん)で自己診断してくるやつほど厄介な患者はいないでしょう(たぶん)。お医者様のご機嫌を損ねないように細心の注意を払って問診を受けます。担当は40手前と思われる若い男性医師でした。

「胸が痛いんですよ(気胸気胸気胸…)←心の声」

「なるほどねぇ、風邪引いてるとかある?」

「引いてないです~(気胸気胸気胸気胸!)←心の声」

「そうかぁ~」

「横になるとポコポコ音が聞こえるんです(ほら、気胸気胸気胸気胸気胸!!)」

「う~ん、じゃあま、レントゲン撮ってみようか」

「ハイ!」

病人とは思えないいい返事をする私。気胸であればレントゲン写真に縮んだ肺が写るはず……やや勝負師の顔でレントゲン室に入ります。パシャリと撮り終わり、待合室で結果を待っていると、先ほどの医師がパタパタと小走りで現れ、

「たまリモさん!気胸気胸だよ!」

無罪を勝ち取ったかのようなテンションで告げました。私も苦難の末に無実を勝ち取ったような気持ちになり「でしょう!」と言いたい気持ちを抑え

「えっ気胸?」

と、まるで初めてその病名を聞いたかのように驚きました。

「そう、気胸!聞いたことない?矢部っちとかかかったの」

「そうなんですか!」

これ進研ゼミでやったところだ!ばりにネットで調べた情報が出てきます。しかし既に気胸のことを知っていると悟られてはならず、純粋に驚くことは忘れません。

「じゃあ入院だね!今日から!」

「え」

3.入院!

こうして入院することになりました。かなり巨大な大義名分を得てしまいました。

不謹慎に思われるかもしれませんが、私は「若いうちに一度は入院しておきたい」と考えていました。というのも、例えば自分が数十年後、老婆になって初めて体調を崩し入院するとなったとして、それは自宅→病院の片道切符の可能性が高いのではないでしょうか?先に退院が待っている入院とそうでない入院は心持ちが全く違うと思っていて、数十年後の老婆の自分にそんな悲しい初めてを体験させるくらいなら、今、大した病気でなくても入院するという経験をしておきたいと思っていたのです。

4泊5日の入院生活。脇の下?まあ肺の横あたりからチューブを差込み、縮んでしまった肺を膨らますのです。常に脇からチューブで繋がっている(点滴のようにガラガラと持ち歩きも可能)のは不便ではありましたが、特に痛むでもなく、それよりもずっと寝っ放しなので腰痛が辛かった記憶があります。常に「イイ感じ」の姿勢を探していました。

病室は4人部屋の通路側。カーテンで区切られています。私以外全員おばあさん。初めての入院生活で困ったことはいくつかありましたが、やはり相部屋ならではのものが多いですね。隣りのおばあさんは夜中もずっとテレビが付けっ放しで、音は聞こえないんですが光がチカチカするから気になって(日中ゴロゴロしているだけで疲れていないのもあり)寝れないんですよ。一度「どうせ見てないんじゃないの?」と思い、自分のところのテレビのリモコンをカーテンの隙間に差し込み電源を切ってやることを試みましたが無理でした。うつ伏せに寝ました。

あと他所の話はわりと筒抜なんですよね。相部屋の誰かのところにお見舞いが来ておしゃべりしているのをなんとなく聞いていたりするのですが、やれあの子は見舞いに来るだの来やしない等の愚痴も耳に入ったりして、自分の未来の姿を思って心が痛むものです。皆さん億劫かと思いますがお見舞いには定期的に行ってください。

私の方にも一度兄がお見舞いに来てくれたのですが、ちょうど私が入院したのはクリスマスの頃だったので、簡易なクリスマスツリーとコンビニのケーキを買ってきてくれました。ベッドのテーブルにツリーを飾り付け、コンビニのスプーン(なぜかフォークではない)でケーキをもくもくと食べたのをよく覚えています。なんかわびしい気持ちもあったのですが、ありがたかったですね。美談ですかねこれ。

 

4.退院!しかし

そんなこんなで、無事5日間の入院を終え、退院しました。それから1ヶ月後に再発してまた入院したり、2ヶ月後に再発して入院したりしたのですが、もう辛気臭いので詳細は割愛します。そう、気胸って再発しまくる病気なんですよ!一度穴が空いたところはちょっとのきっかけでまたパカッと空いてしまうようなのです。ちなみに1回目の再発は母の誕生日ケーキを買ってテンションが上がって小走りになった瞬間のことでした。穴が空いた感じって自分でもわかるんですよね〜。このときは咳が止まらなくなって、寝るときも辛かったです。

再発再発ときたので、最終的には穴の空きやすくなったところを除去する手術をしました。内視鏡の手術だったので開腹はなかったのですが、これが猛烈痛かったです。手術中はもちろん麻酔が効いているので痛みはないのですが、やっぱり体に穴を空けると痛いんですね!術後(といっても半日くらい)は痛みで悶絶していました。「数時間後には麻酔が効きますよ」なんて言われても「え、この痛みが数時間も続くの……?」とかなり絶望しましたね。自分が病気を苦に自殺する人の気持ちが少しだけわかりました。

 

5.結論!

やっぱり健康が一番ですね!病気になることがいかにコストであるか、最後の手術の精算をしたときに痛感しました。気胸は原因不明なので気をつけようがないのですが、もう二度とあんな思いはしたくないものです。こればっかりは天に祈るしかないですね。

 

(おわり)

 

余談

前回書いた通り、数年前は「胸が痛いなんて今までになかったことだ!なにか異常があるはず!」と思い気胸が発覚したわけですが、いまは肺のあたりに違和感を覚えたり心臓付近がチクチクしたりすることがわりと日常的に発生するので、次は気づける気がしません。どうしよう。

気胸になった日(発見!編)

こんばんはたまリモです。


気胸という病をご存知でしょうか。簡単に言うと、肺に穴があいて縮んでしまうという病気です。痩せ型で若い男性に多いことから、「イケメン病」なんて言われることもあるとか。芸能人だと俳優の佐藤健さんや嵐の相葉くん、ナインティナインの矢部さんが罹患したと報じられています。

今回は、特に若くも痩せてもなく男でもない私が気胸になった日の話をします。もう数年前の話です。ご自分や家族の方がかかった場合や、「相葉くん、こんな目にあってたんだ……かわいそう……でもがんばっててえらすぎ……(涙)」と思いを馳せたい場合にご活用できる知識をお伝えできたらと思います。

 

1.発見!
その日は12月も後半で、長く続いていた案件も無事稼働し、珍しく穏やかな頃でした。仕事と言えば終わった案件の資料をまとめるくらいで、定時が来たら速やかに帰宅し、あとは年末年始を待つばかりというすこぶるSEらしくない日々。
そんなある日の昼過ぎくらい、胃でも腸でもなく…ちょうど左の胸あたりに痛みがあることに気づきました。といっても強い痛みではなく、なんだかぼんやりと痛いかな、という程度。しかし左の胸と言えば、吸血鬼を殺すときに狙ったり祭壇に捧げたりする重要パーツがあるところです。普段やたら「痛い」「もたれてる」「ムカムカする」「ガスたまっとる」等とやかましい胃腸と違って普段はまるで静かな彼。その彼が何か伝えようとしている……?少しの不安と、もうやることないし早く帰りたいなという気持ちたくさんから、早退を決意しました。プロジェクトのリーダーに「病院行くので早退します」と伝えると、「えっなんで?」との返答。「そうなんだ気をつけて」くらいの返しを予想していた私は動揺して、つい「心臓が痛いので」と答えてしまい、「え!?大丈夫なの…?!」というリーダーを尻目に会社を出ることになりました。変な心配かけてごめんなさい。
思いがけず重病疑惑を仄めかして職場を脱した私は、最寄りの病院に行きました。しかしその日は木曜日、病院は定休日だったんですね。それなら仕方がないということで、職場近くの内科がある病院を片っ端から訪ねていきましたが、どこも休みだったり予約必須だったりでなかなか診察を受けられません。とても我慢できない痛みではないとは言え、心臓が痛いと言って早退をかました手前「気のせいでした☆」という結論は避けたい。何か異常見つかれ~と不謹慎にも半ば祈るように彷徨い歩く。結局、隣駅まで歩き、駅前のイオンにあるクリニックで診察を受けることができました。お医者さんはおじいさんに片足突っ込んだくらいの男性。私が「今日の昼過ぎ頃から左胸のあたりが痛い」ということを告げると、「風邪引いてます?」と確認されました。引いてないと伝えると「なんだろうねぇ、まあ何もないと思うよ」との軽い返答。多少不安(と期待)があった私は「え、何もないのに胸が痛くなるなんてことあるんですか?」
と尋ねましたが「う~ん、でもまあわからないことってあるからね」と医師。
それを解明するのが貴様の仕事だろう!!
と思ったものの、一駅歩いた疲れもあり
「そうですか…」
と引き下がる私。診察料をいくらか払って「これは何代なのだろう」と思いながらタクシーで帰宅する。
家に帰ってから脳内会議を始める。
心臓が痛いとまで言った手前、手ぶら(?)では出社できんぞ…仮病に心臓を持ち出す厄介な奴と思われてしまう…でも胸のあたりが痛いのは本当だし、なんなんだろこれ…
頼みの綱はネットのみ
「心臓 痛み」
「心臓 突然 痛み」
「左胸 疼痛」
疼痛なんて難しい言葉を知って早速検索ワードに取り入れる私。そのうちに、肺に異常がある場合も痛みが出る場合があると知る。なるほど、左胸というとすぐ心臓を思い浮かべるが、他の臓器もあるわけね、なるほど…
左胸の痛みについての知識がどんどん深まる。この中のどれかなのかなー、どれでもないのかなー、それともやっぱたまたまなぜか痛いだけなのかなー…
とりあえず座っててもダルいので横になる。すると

ポコ…ポコ…

?!
体の中から異音がする。それも普段聞かないタイプの。こいつは急いで検索だ!
「肺 ポコポコ 音」

2ちゃんねる某スレ過去ログのレス)

体からポコポコ音がすると思ったら気胸だったWW(というような内容)

これだーーー!!!同じーーーー!!!!


同じく異音が鳴る人が、過去に、この地球のどこかに(大げさか)いたのだ……。なぜか軽く感動。病名も命に別条はないけどよく聞く簡単な病気じゃない感じがちょうどいい。これは早速循環器科セカンドオピニオンだ!ということで、今度は家の近くの病院に行くことにしたのでした。

(つづく)

 

気胸予備軍へのメッセージ◆肺のあたりがほんのり痛いなと思ったら、横になって胸の音に耳を傾けてみること。