えとぶんでえすいーのブログ

したっぱシステムエンジニアが日々気づいたことを絵と文で書く(SE色薄め)

熟年夫婦の「最後の晩餐何食べる?」で羨ましくもほっこりした話

こんばんは、たまりもです。

表題の話をします。

f:id:tamarimo:20170624224720p:plain

※特になくてもよい絵

 

「最後の晩餐なに食べる?」

なんて話、たまにしますよね。

「カレー」←本当に好物なんだなあ

「白飯と味噌汁」←なんかカッコつけてない?

「フグの肝」←最期まで好奇心を忘れないのね

「死んだ母さんのにぎってくれたおにぎり」←……悲しくなるよ…というか聞きたいのはそういうことじゃないよ…

とまあ人によっていろんな答えが返ってきて、そこから人柄が伺えたりして、暇つぶしにはもってこいのテーマなわけです。(ちなみに先日私がこの話をしたときは「最後の晩餐とは自分だけの話(死刑執行等)なのか、それとも世界全部なのか(隕石衝突等)ハッキリしてくれないと決められない」という設定自体に物言いが付けられて結論が出ずに終わりました。そう考えるとあんまもってこいじゃないかも)

先日ひとりで鰻屋に行ったんですが、そのとき隣のテーブルの夫婦がこのテーマについて話していました。どちらも60過ぎくらいで、奥様はショートカットでチャキチャキしたカッコイイ感じ、一方ご主人は大人しめの、どちらかといえば寡黙な雰囲気の方でした。こちらはひとりなもんですから、鰻を食べながら、その話をBGM代わりになんとなく聞いていたのです。どうやらこのお店には定期的に来られているらしく、「今年も来られてよかったわね」「やっぱりここおいしいわね」などと言い合っており、なかなか仲睦まじい感じなんですよ。うらやましい。

すると奥様の方が突然

「あなた、最後の晩餐は鰻とステーキどっちがいい?」

と持ち出してくるではないですか、例のテーマを。私は(最後の晩餐、その2択なの?ご主人の好物なの??)と思いながら耳が離せません。

以下会話形式で。(奥様:奥、ご主人:主、私:私)

主「なんで急にそんなこと」

奥「どっちが好きなのかなと思って」

主「う〜〜〜〜〜ん……高級感で言ったら、鰻かなあ」

私(2択でよかったのかー!っていうかステーキは高級じゃないのー?)

奥「そうなのね」

主「うん……

その前の日はステーキ」

私「!?(え〜〜〜!そんな何日も献立表作るのアリ!?)」

最後の晩餐の前の日を持ち出すのズルいじゃないですか!ご主人の柔軟な発想と突然のワガママっぷりに驚きつつキュンとする私。話はまだ続く。

奥「前の日はステーキなの?

……じゃあその前の日は?」

私(おお、奥様うわてだわ…)

主「う〜ん……」

奥「ちくわの煮たやつ?」

私(!!!!!???????)

そのあと特に「ちくわ!?」ともならずに別の話題を続ける夫婦。しかしちょっと立ち止まってよく考えて欲しい。まさかの3位が「ちくわの煮たやつ」ですよ!なんですかそれおいしいの!?1位鰻、2位ステーキ、からの3位ちくわの煮たやつ!!料理名ですらなし!夫婦にとってはフツウの会話かもしれないですけど、私はこの一部始終を心に刻み付けることに決めましたね。

そしてこうなるとね、もう勝手に心温まるスイッチが入りますよ。炭に一度火が入ったらあとは放っておいても消えることがないように、どんどん私の中で温かさが増していきます。きっとご家庭でも、奥様が夕食にちくわを煮ていると、ご主人が鍋を覗いて「おっ、ちくわの煮たやつか…」なんて言うんだろうな、とか。「それ好物なんだよ、ありがとう!」なんて言われずともわかるんですよ奥様には…とか。(あの人意外とこんな庶民的なもの好きなのよね)なんて思ってたりして…ご主人の誕生日のご馳走(もちろんステーキ)に付け合わせとして静かに横たわってたりして……とか!

私がちくわのくだりから脳内二次創作をこしらえてほっこりしている内に、この夫婦は「今度ロイヤルホスト行きましょう、ご無沙汰だから」「ミックスフライ定食とか食べたいわ」と話しながら鰻屋を去って行きました。

こんな結末の「最後の晩餐」聞いたことないですよ。しかしかなり思うところがありました。別に会話の内容としては爆笑する要素もないし、実際お二人もほとんど笑っちゃいなかったのですが、夫婦や恋人同士の会話の行き着く先ってここでありたいなと思わせるなにかがあるんですよね。

私は趣味で深夜ラジオをよく聞くのですが、そこでの話って「内輪話」になりやすいんですよね。「パーソナリティとリスナーだけがわかる話」ってのがおもしろいんですよ、特に深夜のテンションでは。私が好きだった「くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン」なんてそれの最たるものと思っていて、あの番組のリスナーなら「まいったね」「先行ってっかんな!」「マックミランだからね」なんてワードを交わすだけでニヤニヤと笑いあえるはずです。そもそも笑いって内輪なもんじゃないですか。誰もが聞いて面白いことなんてそうないし、それは友達同士の会話だって同じことでしょう。

話は戻って、夫婦や恋人の会話って、突き詰めると「思い出を起因にした話」が8割なんじゃないの、って思うんですよね。もちろん「今」の話もするんでしょうけど、特に老後お互い家にいるってなったら、何か特別報告することもなさそうじゃないですか。そういうとき「あのときこうだった」「ああだった」っていう二人しかわからない、端から聞いても何が面白いのかわからないことを話す喜びというか、積み重ねてきたからできる会話をするんじゃないでしょうか。ちくわの話も、ご夫婦ふたりのちくわエピソードがあったから生まれたような気がするんですよね。結婚しない人が増えたなんて言われて、まあ結婚しない自由もあるよなとも考えるんですけど、こういうの聞くと「やっぱりいいな〜夫婦」って思います。

 

私もちくわの話を誰かとできるようになりたいものです(かなりざっくりした結論)。

 

おしまい。